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August 29, 2010

「カラフル」 玉電

☆☆☆ その昔、渋谷から二子玉川までのんびり走っていた路面電車の玉電。その姿は素朴でありながら優美さも兼ね備え、あわてず騒がず、わが道を行くその走りはいまでは伝説にさえなっています。その玉電が2010年のアニメーション映画で復活するとは思いもしませんでした。「電車でGO!」の玉電編が出たら絶対買っちゃうのになあ、と常日頃から思い続けている者にとって(乗った経験があるのではなく、乗ってみたいなあという意味ですよ)、支線の砧線とはいえ、玉電が走る風景が現れたことに、まず嬉しい驚きを感じました。もちろん、物語は現代の話なので、玉電は映画の中でも現在形ではなく、ありし日の姿として現れるのですが、その線路跡を歩くことで、少年の荒れた心の傷が癒やされていくきっかけになっていくという、なんともニクい設定。廃線跡でなくても、知らない場所をあてどもなく歩くうちに、心の中にいままでにない気持ちの余裕が生まれてくるという経験は誰にでもあるのではないでしょうか。しかも、友だちと一緒ならなおさらかもしれません。このエピソード、森絵都の原作小説にはなかったような気がするので、映画独自の発想なのでしょうが、いまや名作と化しつつあるお話に違和感なく溶け込んでいるのだから、まいったというしかありません。もちろん、この場面に限らず、原作の肝をはずさず、日常の情景を丁寧な描写でアニメ化した原恵一監督の手腕は評価するしかなく、主人公が自分の行きたい高校のことを必死で訴える場面など、へたな劇映画などかなわない感情がこみあげてきて、思わず涙が出そうになりました。そう、すべては日常の延長の中にあるのです。日常の空間をコトコトと路面電車が走っていたように。

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Comments

普段見慣れている風景が映画の中で
見られるとうれしいです。

Posted by: たんぽぽ | August 30, 2010 at 09:11 AM

たんぽぽさんのブログ拝見しました。
玉電の宝庫ですね。
なんだか癒されます。

Posted by: えん | August 30, 2010 at 11:59 PM

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