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February 04, 2006

「ミュンヘン」 ベスト・オブ・スピルバーグ  

☆☆☆☆ 「宇宙戦争」のようなつまらないSF映画をつくったすぐあとに、こういう名作をつくってしまうというのは、どういう頭の構造をしているのだろうと思いますが、そのような凡人にははかりしれないところが、天才の天才たる所以なのかもしれません。ただ、「宇宙戦争」に単なる娯楽映画にしては妙に暗いところがあったのは、今にして思えば実はこの映画へ至る軌跡だったのかもしれません。彼の真面目路線の映画の系譜でいうと、「太陽の帝国」は若気の至りみたいなところがあったし、「シンドラーのリスト」はまだ、えへ、ぼくって真面目な映画だってできるんだよ、という感じが残っていたし、「プライベート・ライアン」に至っては、いつのまにかヒーロー映画にすりかわっていました。つまり、どこかノウテンキな感じがつきまとっていたのですが、今回の映画は自分の技術をひけらかすのではなく、言いたいことのために自分がこれまでの映画で培ってきた技術を使わざるを得なかったという切羽詰った感じがあって、これまでのベスト1ではないかと思います。暗殺の失敗や、暗殺者の苦悩や、疑心暗鬼や、国家観、それらすべて含めてミュンヘン事件の時代だけではなく、今に至るまでの「世界」というものを捉えてしまった力技には脱帽するしかありません。そして、人と人には結局理解不可能な線があるということを暗示させる絶望的なラストシーン。思い返せば「宇宙戦争」にも確かにそういう絶望感は流れていましたが、それがこういう形で発展するとは思いもよりませんでした。不覚を恥じます。

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