「運命じゃない人」 才能あふるる軽薄さ
☆☆☆
1枚の白黒の絵があります。
白い部分だけ見てると、グラスに見える。
黒い部分だけ見てると、向かい合った二人の人の横顔に見える。
そういう絵があります。
トリック・アートというのかな。
その、映画版という感じです。
白い部分だけ見てると、単なる恋愛映画。
黒い部分だけ見てると、お金を巡る単なるドタバタ。
ところが、その白い部分と黒い部分には境目があって、
これが白というか黒というか、見方によって
全然変わるから面白い。
世の中とはそういうもんで、同じ時間、同じ場所で同じことを
していても、見方によって全然違うもんだなあ。
そんなことを大笑いしながらしんみりと思ってしまう
不思議な映画なのですが、
それをわかりやすく、面白く見せる手腕はなかなかのものです。
わかりやすい、というのは世界的にわかりやすい、
面白い、というのは老若男女が面白い、
ということでカンヌで話題になったのも納得。
タクシーを追いかけて、追いかけて、追いかけて、
やっと追いついたあとの男の一言のおかしさ。
同じシーンを違ったアングルから見ただけでこんなにも
おかしいものかと感心するのは、ベッドの下からの足をとらえたアングル。
もう必見のシーン満載です。
脚本もうまいが、演出もまたうまい。
才能あふるる軽薄さ。
こんな面白い映画が都心の小さな映画館でしか
観られないなんて、日本の映画状況も情けないやら悲しいやら。
この監督、日本のビリー・ワイルダー(お熱いのがお好き!)に
なれるかもしれないというのに。
ひとりでも多くの人に観てほしい傑作コメディです。


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