October 30, 2005

「春の雪」 ほんとの主役は♀♀♀だった

☆☆☆ 妻夫木聡と竹内結子の恋愛映画を見に行ったつもり
だったのに、中身は若尾文子、岸田今日子、大楠道代という
旧大映女優トリオの存在感が圧倒するシニア映画決定版でした。
なにしろ、見終わってみて初めて、
若い二人の恋の行方を裏から巧妙にあやつっていたのは、
このひと癖もふた癖もある三人の意地悪ばあさんだったと
気づくのだから。
はい、もう、貫禄負けです。
もうひとつ、特筆すべきは、撮影監督リー・ピンビン。
あの「花様年華」の撮影監督だと言われれば納得の、
とろけるような映像に仕上がっています。
これほど絢爛でエキゾチックな映像の日本映画というのは
近頃ないのではないでしょうか。
これで、主役がトニー・レオンとマギー・チャンだったら
「花様年華」並みの大傑作になったところです。
どこかの雑誌にも書かれていましたが、日本人なら
往年の市川雷蔵と若尾文子で見たかったところです。
けれど、市川雷蔵は死んじゃったし、
若尾文子はいまや三婆だし、それは見果てぬ夢ということで。
いまどき、三島文学を映画にしてくれたというだけで、
感謝、感謝。
あの、とても生身の人間が言うとは思えない
文学的な硬質なせりふが聞けただけでも良しとしましょう。
妻夫木君にはもっともっとあの、奇っ怪な文学調書き言葉を口にして
ほしかったなあ。

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October 22, 2005

「ティム・バートンのコープスブライド」 ティムには哀しみがよく似合う

☆☆☆ ティム・バートンといえば、
「マーズアタック」も「猿の惑星」も「スリーピーホロー」も
それなりにおもしろかったし、
「ビッグ・フィッシュ」とか「チャーリーとチョコレート工場」とか
独特のイマジネーションにプラス大人の視点も備え始めて、
とうとう名匠の域に達してきた気がするのですが、
やはり私にとって最高傑作は初期の映画「シザーハンズ」です。
イマジネーションのひろがりだけではなく、
あの映画が醸し出す、異形の者のせつなさ、哀しさがやるせなく、
心に染みたのを忘れられません。
数々の傑作をものにして、とうとう、あの、哀しみの世界が戻ってきた、
それだけで「コープスブライド」、嬉しくてしかたありません。
今回哀しみを体現するのは人形なのですが、
人形でなおかつ死んでいる役というのが
なんとも錯倒し、しかもラストはある種死者にとっても
ハッピーエンドという、かなり一筋縄ではいかない話でありながら
どこかシンプルで透明な哀しみに彩られていて
(主役三人の印象的な目!)
本当に「シザーハンズ」の姉妹篇のようなファンタスティックな出来あがりです。
もちろん、人形の造形や動きは、言うところないほど魅惑的であり、
まだ見ていたいと思うほどコンパクトな上映時間も
だらだらと無駄な時間ばかり引き延ばした最近の映画の中では
潔く、好感が持てます。
2005年必見の1本です。

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September 27, 2005

「タッチ」 タッチ・アウト!

☆ だから言ったんです。若手監督はみんな「シンデレラマン」を
研究してから映画を撮れって。(「シンデレラマン」の項、参照)
同じスポーツ映画なのにこうも違うものかと愕然とします。
そりゃあ、「シンデレラマン」と比べちゃ可哀想だよ、と
いうかもしれませんが、こちとら自腹じゃ!
同じ1800円払っているんですよ。同じ感動与えてよ。
とにかく、話が雑。
「シンデレラマン」はこれでもかというくらいしつこく、しかも自然に
試合の意味を語りかけて観客をじっくり乗せていくのに、
「タッチ」の乗せ方は、ゆるい、ゆるい。
ライバルの描き方も、ゆるい、ゆるい。
しょせん、アイドル映画なんだから
このゆるさがいいんだよ、と言っているうちは日本映画に
進歩はありません。
犬童一心ほどの才能の持ち主を甘やかしてはいけません。
あの超傑作「二人が喋ってる」の監督ですよ!
あのちょい傑作「ジョゼと虎と魚たち」の監督ですよ!
あのプチ傑作「メゾン・ド・ヒミコ」の監督ですよ!
あのミニ駄作「黄泉がえり」の脚本家ですよ!(と、これは蛇足だったか)
志は高く持て!

p.s.原作のときも感じたけど、カッチャンってふんだりけったりの
人生じゃありませんか?

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September 24, 2005

「シンデレラマン」 知的なロッキー

☆☆☆☆

ボクシング映画といえば今年は「ミリオンダラーベイビー」。
でもあれはちょっと玄人好きのする映画。
万人向け正統派はこっち。
ロン・ハワードはいつもながら、教科書のようにツボを押さえた
演出で、誰もが納得の危なげない映画に仕上げています。
映画とは、ひとりよがりな映像を見せつけるものだと勘違いしている
某国の若手監督はいちどこういう映画を研究して、
プロの映画つくりとはどういうものなのか、会得してもらいたい
と思うほどです。
貧しい男がチャンピオンをめざすという話は、
むしろ「ロッキー」に近いのだけれど、
スタローンのバカっぽさに対してラッセル・クロウは
どこか知的な雰囲気が映画に品格をもたらして
文句のつけようがありません。
アカデミー賞級の映画だとは思いますが、
2年連続でボクシング映画が賞を取るなんて、ちょっと
考えられないかな。

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August 27, 2005

「容疑者 室井慎次」 こんなことのために

☆☆

「こんなことのために俺たち振り回されてたのかよ」
真相がわかったあとの新宿北署員のひとことだけれど、
それって観客のひとことでもあります。
つまり、「こんなことのために2時間も映画を観てたのかよ、
くだらねえー」と言って映画館を出たい
誘惑にかられます。
けれど、これまでの「踊る~」シリーズは「交渉人~」も
含めて、映画のつくりが軽薄なので、観客も無責任に
「そんなのありかよー」と映画を馬鹿にできるのですが、
今回は妙にまじめなつくりなので、
「そもそもあんな任意聴取のやりかた、ありかよ」とか
「そもそもちゃんと捜査すりゃすぐわかる程度の事件じゃん」とか
思っても、軽々しく口に出して、それをさかなに喫茶店で茶でも飲むかという
気になれない妙な居心地の悪さを感じてしまいます。
やはり室井慎次はちょこっと出てくるところでいいキャラクターなのかも
しれません。

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«「運命じゃない人」 才能あふるる軽薄さ